「あの先輩、ほとんど調剤も監査もしてないのに、なんで本社からあんなに評価されてるの?」

そう感じたことがある薬剤師さんは、けっして少なくないはずです。

こんにちは、転職案内人です。現役の薬剤師として店舗の係長を務め、5店舗を管轄する立場で日々現場を見ています。年収はだいたい700万円ほど、いわゆる「中間管理職」のポジションです。

今日はちょっと重たい話をします。「仕事をしないベテラン薬剤師ほど、本社からの評価が高い」——この、現場の人間からするとどうしても腑に落ちない構造の話です。

これは特定の誰かを悪く言いたいわけではありません。むしろ、こうした矛盾が起きてしまう「会社の仕組み」のほうに問題があると、私はずっと考えています。同じようにモヤモヤしている方の整理の助けになれば嬉しいです。


1. 「仕事をしないベテラン薬剤師Aさん」のリアル

私の管轄店舗のひとつに、仮にAさんとしますが、勤続年数の長いベテラン薬剤師がいます。

知識は本当にあります。新薬の話も、添付文書の細かい注意書きも、保険のローカルルールも、聞けばたいてい正確に答えてくれる。「歩く薬辞典」と言ってもいいくらいです。

ただ——通常業務をほとんどしません。

その店舗は処方箋がだいたい1日150枚、通常4〜5名体制で回しています。1人がほぼ稼働しないというのは、現場としてかなり重たい話です。

ところがAさん、ある場面では急にスイッチが入ります。実習生が来たときです。


2. 実習生が来た瞬間、Aさんは「先生」になる

大学から薬学実習生がやってくると、Aさんはピタッと張り付きます。

そして、ずっと喋る。通常業務はほぼ放棄して、実習生に向かって話し続ける。それが何時間も続くこともあります。

話の中身は、知識量の人だけあって確かに濃い。ただ、現場の感覚で正直に言うと、

「実習生にとって、いま必要な話か?」

というレベルの、かなりオーバースペックな内容になりがちです。専門書の応用編のような踏み込んだ薬理の話、あるいはベテランならではのレアケースの話。実習生はうなずいて聞いていますが、本来この時期に身につけるべき基本の調剤の流れや投薬の組み立ては、その間ほとんど触れられないままになります。

そして、Aさんが実習生対応をしている間、その分の通常業務は——他のスタッフ全員でかぶっています。


3. 「実習生がうちの会社に入社しました」という"実績"の裏側

ここからが本題です。

過去に、Aさんが対応した実習生のうち何人かが、後にうちの会社の社員として入社した実績があります。

本社はこれをこう評価します。

「Aさんの実習生対応のおかげで、優秀な人材が入社してくれた」
「Aさんは採用面でも貢献している」

——この評価軸自体は、間違いとは言いません。ただ、現場の実態を知っている人間からすると、この理屈は半分しか合っていないんです。

なぜか。

実習生が「この薬局いいな、この会社で働きたいな」と思う最大の理由は、私が現場で聞いてきた限り、こうです。

つまり、Aさん以外のスタッフが、Aさんの分の業務をかぶりながら、それでも実習生に笑顔で接していた——そのアットホーム感こそが、入社の決め手になっている部分が大きい。

なのに、評価は全部Aさんに行く。これが、現場が静かに疲弊する大きな原因のひとつです。


4. なぜ本社は「現場の実態」が見えないのか

ここで一歩引いて、構造の話をします。

本社の人事評価は、どうしても「数字に落ちるもの」「報告書に書けるもの」を中心に組まれがちです。

一方で、

これらは、数字に出ないんです。報告書のフォーマットにも入らない。本社の人が店舗に来るのは月に1回あるかないか、しかも来るタイミングは事前に伝わっているので、その日はAさんもそれなりに動きます。

結果、本社が見ている「Aさん像」と、現場が日々見ている「Aさん像」は、まったく別人になる。

これは個人の問題というより、評価制度が"プロセス"ではなく"結果"だけを切り取ってしまう構造の問題です。


5. 中間管理職が現場を吸収してしまう、もうひとつの罠

私自身、係長として何度もこの件を上に相談してきました。

口頭でも伝えましたし、面談の場でも繰り返し伝えました。

返ってくる答えは、だいたい同じです。

「うーん、でもAさんは実習生の件で本社評価高いからね」
「もう少し様子を見ようか」
「現場でうまく回してくれているし」

——この「現場でうまく回してくれているし」が、いちばん厄介なんです。

中間管理職である私たちが、頑張って穴を埋めて、なんとか店舗を回してしまうと、上から見れば「問題なく回っている店舗」に見える。現場が踏ん張れば踏ん張るほど、問題が表面化しない。

結果、改善は後回しになり、不公平な評価がそのまま温存されていく。これは多くの薬局・チェーン店で起きている、かなり普遍的な構造だと感じています。


6. 疲弊しないための「自衛策」3つ

では、こういう環境にいる薬剤師さんは、どうすればいいのか。私が現場で実践している、あるいはスタッフに勧めている自衛策を3つ紹介します。

① 自分の業務量を「見える化」する

頭の中だけで「私ばっかりやってる」と思っていても、上には伝わりません。

簡単なメモでいいので、1〜2週間、客観的な数字として残すことをおすすめします。これは、後の交渉カードにもなりますし、自分のメンタルを守るうえでも「気のせいじゃない」と確認できる効果があります。

② 異動・改善要望は「書面(メールでもOK)」で出す

口頭での相談は、残念ながらほぼ記録に残りません。「言った・聞いてない」になりがちで、上司が変わった瞬間にリセットされます。

メールでも社内チャットでもいいので、文字として残るかたちで要望を出してください。

例:
「現状の業務分担について、〇〇の点で負担が偏っております。配置の見直しをご検討いただけませんでしょうか。」

これだけでも、扱いはまったく変わります。記録があるということは、本社や人事に話が上がる可能性も生まれるということです。

③ 「環境を変える」という選択肢を、心の中に常に持っておく

これは精神論ではなく、現実的な話として書きます。

会社の評価制度は、個人の努力ではほぼ変わりません。Aさん本人を変えることもできませんし、本社の評価軸を変えることもできません。

変えられるのは、自分が身を置く環境だけです。

我慢して心身を壊してから動くより、「いざとなれば動ける」という状態を作っておくこと自体が、いちばんの安全装置になります。


7. 現役薬剤師として正直に思うこと

私自身、現場に立ち続けている薬剤師として、この仕事は本当に好きです。患者さんから「ありがとう」と言われたときの感覚は、何年経っても色あせません。

ただ、「頑張る人ほど評価されない仕組み」の中にずっといると、どれだけ仕事が好きでも、少しずつ削られていきます。

もし今あなたが、

——こういう状態にあるなら、それはあなたの能力や努力の問題ではなく、その職場の構造の問題である可能性が高いです。

同じ薬剤師という資格、同じ業務内容でも、職場が変われば評価軸はまったく違います。人を正しく見てくれる現場は、ちゃんと存在します。

「転職」という言葉はちょっと重たく感じるかもしれませんが、まずは情報を集めるだけでも、視界はずいぶん変わります。求人を眺めるだけで、「ああ、自分の市場価値ってこのくらいなんだ」「他社はこういう評価制度なんだ」と気づけることはとても多いです。

転職エージェントへの登録は無料ですし、登録したからといって必ず転職しなければいけないわけでもありません。今の環境を冷静に評価するための"ものさし"を持つ——その目的だけでも、十分使う価値はあると私は思っています。


まとめ

頑張っている人がきちんと評価される現場で働く——これは、ぜいたくでもわがままでもなく、本来当たり前のことです。

もし今、毎日の業務でモヤモヤを抱えているなら、まずは小さな一歩として、情報収集から始めてみてください。

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※本記事の体験談は運営者個人のものです。会社・店舗・人物の固有情報は伏せています。