こんにちは、「転職案内人」です。
現役の薬剤師で、現在5店舗を管轄する係長として働いています。年収はおよそ700万円。世間的には「順調に出世しているライン」に見えるかもしれません。

でも、正直に言います。
「店舗を増やしてあげるよ」という打診を、即答で喜んで受けてしまった過去の自分を、今の自分は止めたいです。

この記事は、これから複数店舗の管轄(エリア長・係長・スーパーバイザー的なポジション)を打診されている薬剤師さんに向けて、会社からは絶対に説明されない「5つの罠」を、私の実体験ベースでお伝えするものです。

特定の会社の話ではなく、チェーン薬局でよく起きる組織パターンの話として読んでください。同じ構造は、規模を問わずどこにでもあります。


なぜこの記事を書くのか

打診される時、会社はこう言います。

「君の力を見込んでお願いしたい」
「給料も上がるし、キャリアアップになるよ」
「断る理由はないでしょう?」

確かに、肩書きは上がります。給料も少し上がります。
でも、その代わりに失うものを、会社は事前に教えてくれません

私が実際に管轄を引き受けてから直面した「罠」を、5つに整理しました。


罠1:指示系統の樹形図が破綻している

組織図を見ると、複数店舗管轄者の上には「直属上司が1人」いるはずです。
ところが現実には、直属上司が3人いるという異常構造が起きます。

なぜか。
過去に複数店舗を管轄していた人たちが、ポジションを移動した後もそのまま「上司」として残っているからです。前任の管轄者がそれぞれ自分の影響力を残したまま昇格していく結果、新しく入った管轄者の頭の上に、過去の管轄者が3人乗っかる構造ができ上がります。

私の場合、上司A・上司B・上司Cの3人がいました。そして問題はここからです。

3人の上司は、お互いに連携していません。

それぞれ違うことを、それぞれ別のタイミングで指示してきます。
全部やろうとすると物理的に時間が足りません。
どれかを優先すると、優先しなかった上司から「なんでやらないんだ」と詰められます。

指示系統が破綻している組織で管轄者をやるのは、地雷原を目隠しで歩くのと同じです。


罠2:ヘルプ調整を「お前が完結しろ」と押し付けられる

これは、ほぼ全ての複数店舗管轄者がぶつかる罠です。

ある日、社長から直接こう言われました。

「店舗Xと店舗Yの2店舗で、ヘルプ(応援人員)を共有して完結させてくれ」

つまり、「他の店舗から応援を借りずに、2店舗の中だけで人員をやりくりしろ」という指示です。一見もっともらしく聞こえますが、現場で実行しようとすると地獄が始まります。

私はまず、上司Aと上司Bに筋を通そうと思って、こう提案しました。

「他店に出しているヘルプを一旦止めて、2店舗で回せるようにしたいです」

上司Bは「いいよ、確認しとく」と言いました。
ところが、その後何の音沙汰もない。

数週間後、上司Aから突然こう言われました。

「いつになったらヘルプ貰わなくて済むようになるの?」

上司Bが上司Aに共有していなかったのです。
私は事情を説明し、改善策をメールで送りました。

その結果、何が起きたか。

上司Aと上司Bが本社で「あいつは勝手なことを言っている。自分のことしか考えていない」と私を評価したのです。

連携していない上司同士の間に立たされ、筋を通そうとすればするほど「勝手なやつ」と判定される。これが2つ目の罠です。


罠3:前任者の隠蔽が解けただけで「クレーム増えた」と評価される

これは特に怖い罠です。

管轄を引き継いだ後、上司Cからこう言われました。

「お前が管轄するようになってから、この店舗のクレームが増えてるぞ」

数字だけ見ると、確かに本社に上がっているクレーム件数は増えていました。
でも、実態はこうでした。

つまり、クレームが増えたのではなく、隠れていたものが見えるようになっただけです。
報連相をきちんとやればやるほど、数字上は「悪化」して見える。

経営層は数字しか見ません。
「前任の隠蔽」と「自分の透明化」を区別できない上司の下では、誠実にやる人ほど評価が下がります。

これは個人の能力の問題ではなく、組織の構造的な罠です。


罠4:休日労働を強いられる「週報運用」

地味に効いてくるのが、これです。

上司3人が月曜午前の本社会議で、私の管轄店舗について質問するのだそうです。
だから、こう要求されました。

「月曜の朝までに週報を出してくれ」

ところが、これがまた現場の運用と全然噛み合っていない。

私が管轄しているのは5店舗。そのうちエリアが近い3店舗は、月曜・火曜の2日間で巡回するシフトを組んでいました。
たとえば「月曜は休み、火曜にその3店舗をまとめて回る」あるいは「月曜に3店舗を回り、火曜を休みにする」――というふうに、月火のどちらかを巡回日、もう一方を自分の休日に充てる運用です。

つまり、月曜が自分の休みになる週も多いわけです。
にもかかわらず「月曜の朝までに週報を出せ」と言われている状態。

結果、どうなるか。
日曜日に自宅で週報を書く羽目になります。

これは実質的な休日労働です。給料は出ません。
しかも、本社会議で質問が出ても、その場で即時回答が必要なわけではない。火曜出勤後に確認しても十分間に合うはずなのに、上司の都合で日曜が潰れる。

複数店舗管轄になった瞬間、休日と平日の境界が曖昧になる。これが4つ目の罠です。


罠5:改善提案が「勝手な行動」扱いされる組織病理

最後にして、最大の罠がこれです。

複数店舗管轄をやっていると、当然「ここを改善したい」という場面が出てきます。
ところが、こういう組織には3パターンの叱責が同時に存在します

つまり、何をやっても管轄者の責任になる構造です。

正解がないゲームを延々と続けさせられる。
これは個人の頑張りでは解決できません。組織そのものが、管轄者を叱責する構造でできているからです。

私自身、半年ほどでメンタルが削れていくのを感じました。
「これは自分のスキル不足ではない、構造の問題だ」と気づくのに、さらに数ヶ月かかりました。


打診を受ける前にチェックすべき4つのこと

ここまで読んで「自分の会社は大丈夫だろうか」と不安になった方へ。
打診を受けた段階で、以下の4点を冷静に確認してください。

1. 直属上司は何人いるか

組織図上は1人でも、実態として「過去の管轄者」が複数残っていないか。前任の係長・前任のエリア長が、今もあなたに口を出してくる立場にいないか。指示系統が一本化されていない組織は、入った瞬間に詰みます。

2. 前任者の引き継ぎ品質

前任者がきちんと報告していたか、現場の問題を可視化していたか。隠蔽されていた問題を引き継いだ瞬間、あなたが「悪化させた人」になります。引き継ぎ書類の薄さ、現場スタッフの口の重さは要注意です。

3. 週報・報告の運用ルール

月曜朝までに提出を要求されるのか。管轄店舗の定休日と、本社会議の曜日が噛み合っているか。休日に報告書を書く運用になっていないか、必ず事前確認を。

4. 改善提案がどう扱われる組織か

これまでに複数店舗管轄者が出した改善提案が、議事録に残っているか。承認のフローは明文化されているか。「言ったもの勝ち」「言ったやつが勝手扱いされる」口頭文化の組織は危険です。


それでも管轄を引き受ける場合の自衛策

打診を断れない事情がある方もいると思います。そういう方は、以下の3つを徹底してください。

すべての連絡をメールに残す

口頭で言われた指示は、必ずメールで「○○という認識でよろしいでしょうか」と返す。口約束は必ずひっくり返ります。罠2で私が経験した「言った言わない」を防ぐのは、これしかありません。

改善提案は会議の議事録に残す

口頭で提案するのではなく、会議の場で出して議事録に記録させる。後から「勝手にやった」と言われた時の防波堤になります。

自分の心身の限界を見極める

睡眠・食欲・休日の過ごし方。これらが崩れ始めたら、それは会社からの警告サインではなく、あなたの体からの警告サインです。会社はあなたが倒れるまで気づきません。


環境を変えるという選択肢

ここまで自衛策を書きましたが、正直に言います。
罠1〜罠5がすでに揃っている組織で、自衛策だけで戦い続けるのは現実的ではありません。

現役の薬剤師として、私はこう考えています。

「店舗を増やしてあげるよ」と言われた時に、即答せずに一度立ち止まる
その時間を作るために、普段から転職市場の温度感を知っておくこと。これが現役管理薬剤師として一番伝えたいことです。

転職エージェントへの登録は、すぐに転職するためのものではありません。
「いつでも辞められる」という選択肢を持つこと自体が、今の職場で自分を守る武器になります。

打診される前に、自分の市場価値を一度確認しておく。
それだけで、判断の余裕がまったく変わってきます。


まとめ

複数店舗管轄の打診には、5つの罠があります。

  1. 指示系統の樹形図が破綻している(直属上司が複数いる)
  2. ヘルプ調整を完結させろと押し付けられる
  3. 前任者の隠蔽が解けただけで「悪化」と評価される
  4. 休日労働を強いる週報運用
  5. 改善提案が「勝手」扱いされる組織病理

会社はこれを事前に教えてくれません。
打診された瞬間に喜んで受けるのではなく、この記事のチェックリストを使って、冷静に組織を観察してください。

そして、もし「これは自分一人の力では変えられない」と判断したら、環境を変えることも立派な選択です。薬剤師という資格は、それを許してくれる強い武器です。

あなたが、自分の心身を削らずに済むキャリアを選べますように。

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※本記事の体験談は運営者個人のものです。会社・店舗・人物の固有情報は伏せています。